読書の時間がない日記

図書館で文芸誌を借りるのが好き。永住の地の最寄り図書館は好みの文芸誌が置いていなくて悲しい。育児と仕事で読書の時間が取れないサラリーマン。

金原ひとみ/ストロングゼロ(新潮2019年1月号)

私には純文学というものがどういうものなのか分からないが、基本的にエンタメとして摂取している。芥川賞を獲った『コンビニ人間』もエンタメと捉えていた自分からすれば、この作品は全くもってエンタメだった。
私は、自分に自信を持っていて人生のあらゆる楽しみを満喫している人に憧れる。そういう意味で、イケメン男性と付き合えて、気軽にセフレが作れて(性に奔放で)、ふらっと一人でバーにも入れる主人公はそれだけで好ましい(羨ましい)なと思ってしまう。恋人の変調からの自身の転落っぷりは凄まじいが、それさえ人生の味でしょって思ってしまう。さすがに職場でアルコールを飲むことをよしとする様(もしくは物語の展開)にはひいてしまうけど、ここまでくると同時に笑いもこみあげた。
最後のアノ荷物を受け取って終わる、どこにも進めない絶望を感じさせた読後感は退廃的作品として素晴らしいと思った。

インターネット界隈でストロングゼロが流行ったのはいつだったか。せんべろなどと呼ばれ、退廃の象徴として世を席巻したと記憶している。金原ひとみの本作が流行らせたのだとしたら、すごいな。