学生時代の、逃げ場のない閉塞環境下における緊張感のある人間関係、あのしんどさを思い出さされた小説。そこまで劇的な事件が起きる訳ではないのに、不思議と読み進めることを止められない。
新人賞なので選評も掲載されているのだが、これも面白かった。川上未映子の言う、トランスジェンダーをメタで語るのではなく個人と個人の物語として描ききったことが傑物であるとの評にはなるほどと膝を打った。独りよがりに読むだけでなく、他者の批評を知るのも楽しいのだなぁと知った次第。自分の読解なんてたかが知れてるので世界が拡がるのを感じる。
ところで、アキちゃんの兄への執着は何物なのか、自分には読み解けなかった。