人が人たる為の“脳”。これをいじれば“その人”なんて簡単に変わってしまう。何をもって“私”ができあがるのか、このテーマがとても興味深い。しかし果たしてこれは小説か?叙述の技法を見ると確かに小説然としているのかもしれないが、どちらかというとへぇーへぇーと何度もボタンを押したくたなるような自己認識に関するトリビアの連発が面白かった。
中村文則はまだ少ししか読んでいないけれど、いつも陰鬱な空気を漂わせており重苦しい作風という印象。とっつきにくくやや難解なテーマを扱うけど、それを読み切らせる筆力があるのだからすごいんだろうなと思う。(何様)