遠野遥/改良(文藝2019年冬季号)
期待の遠野遥初作品。しかし、明け透けなエログロは苦手なのでこの作品は駄目だった。冷徹に美醜について評価を下すのだけが良かったかな。
んー、もう一作くらい読んでみるか、ずっとこんな作風なんだろうなという気もするけど。次回に期待。
舞城王太郎/裏山の凄い猿(群像2018年12月号)
正直、舞城王太郎のぶっ飛び感はあまり好きになれず、食指が動かない。世界観もぶっ飛んでいるし、何より怒涛のように流れ打つ文書が好みではない。が、これは面白かった。「結婚できない」と指摘されたことに素朴に悩む主人公にまず胸を捕まれ、「人のことを上手に好きになれん」と明言するチャーミングな母ちゃんにやられた。
過去の事件の推理的展開は読ませるし、主人公なりの“優しさの発揮”の仕方は人間臭くて良いよね。
読みながら、4歳の自分の息子のことも考えていた。
「啓太くん、」
と俺が手を伸ばすと啓太くんがそれを握ってくれる
子供ってこんなに素直なのか、と少し驚く。
六歳児の手は小さく、指は細い。
でも固く、暖かい。
生きている。
ほんと、その通りなんだよ。
上田岳弘/ニムロッド(群像2018年12月号)
不思議な吸引力をもつ作品。盛り上がりには欠けるので序盤から中盤まで、登場人物に愛着が湧いてくるまでは読み進めるにあたって多少こちらのコンディションを選ぶ。
箴言めいたセンテンスが散りばめられていて、それは好み。特に、主人公の彼女が呟いた、発展しすぎた現世においてこれ以上を作り出すことができない虚無のようなものを嘆く?台詞が大好き。だって自分も同様の思いを馳せることが間々あるから。
「いいじゃない、別に、どういう風に想像したって。どうせもうほとんどの人はこの世界がどうやって運営されているのかなんて、知らないし興味だってないんだから。誰かとても頭の良い人が仕組みを作ってくれて、それにのっかっていればいいんだっていうのが経験則。それ以上のことを考えるのには一つ一つのパーツが難しくなりすぎてる。どんどん岩が重くなっていって、それを一ミリでも前に進めることができるのは、ほんの一握りの人だけ。それだって、どこかむなしさの中でやってているように見える」
最後に一人ぼっちになった主人公が描かれるが、寂しすぎるよ。僕はニムロッドもtakubonも大好きだったのにさ。