上田岳弘/ニムロッド(群像2018年12月号)
不思議な吸引力をもつ作品。盛り上がりには欠けるので序盤から中盤まで、登場人物に愛着が湧いてくるまでは読み進めるにあたって多少こちらのコンディションを選ぶ。
箴言めいたセンテンスが散りばめられていて、それは好み。特に、主人公の彼女が呟いた、発展しすぎた現世においてこれ以上を作り出すことができない虚無のようなものを嘆く?台詞が大好き。だって自分も同様の思いを馳せることが間々あるから。
「いいじゃない、別に、どういう風に想像したって。どうせもうほとんどの人はこの世界がどうやって運営されているのかなんて、知らないし興味だってないんだから。誰かとても頭の良い人が仕組みを作ってくれて、それにのっかっていればいいんだっていうのが経験則。それ以上のことを考えるのには一つ一つのパーツが難しくなりすぎてる。どんどん岩が重くなっていって、それを一ミリでも前に進めることができるのは、ほんの一握りの人だけ。それだって、どこかむなしさの中でやってているように見える」
最後に一人ぼっちになった主人公が描かれるが、寂しすぎるよ。僕はニムロッドもtakubonも大好きだったのにさ。