宮内悠介/ローパス・フィルター(2019年1月号)
テーマは面白い。過激で扇情的なものが溢れるSNSからそれらを排除して静寂なSNSを実現したいというのは誰しもが願っていることのように思う。(と思いつつ、はてなブックマークをヘビーに利用する自分は矛盾しているけれど)
「乱暴にまとめると、昔、頭のいい人たちがこういうことを考えた。人類は啓蒙されて進歩したのに、なぜその先にナチズムといった野蛮が発生するのか。彼らの結論はこう。それは、啓蒙というものそれ自体が持っている性質なのだと」
「わからんな。啓蒙されれば文明化するんじゃないのか?」
「啓蒙は人間を支配し、人間のうちにある自然をも抑圧する。内面の自然を抑圧した先は、いわば一つの死だ。だから、啓蒙による支配は不満を生み出す」
「たとえば、ユダヤ人に対する排外主義とかか」
「そう。…
「支配的な啓蒙からウェブを解き放つために、ウェブそのものを支配しようとした。ナチズム的なる野蛮の萌芽を摘むために、精神病者の排除というナチズムそのものを用いた」
こういう思考実験?みたいなのが好き。真理に近づいた気がするから。
また、難解難読な単語が随所に散りばめられている文章もインテリ欲?を満たされて自分としては好み。(スノッブになりたい。)他の作品を手に取ってみたくなる作家さんだった。