読書の時間がない日記

図書館で文芸誌を借りるのが好き。永住の地の最寄り図書館は好みの文芸誌が置いていなくて悲しい。育児と仕事で読書の時間が取れないサラリーマン。

天童荒太/迷子のままで(新潮2019年1月号)

初・天童荒太。文芸誌は新しい作家さんと触れ合う機会があって楽しい。
文章が上手いという印象はない。極端に言えば説明文の羅列のように思えてしまう。文章表現ではなく、扱うテーマと物語の内容で勝負する作家さんなのかな。4歳児を育てている自分にとっては穏やかではいれらない「児童虐待」。それだけではなく、「DV」「家庭崩壊」「離婚」「貧困」「階層の固定化」といったところか。育児世代になってから結構頭をもたげるキーワードたちだ。これらのテーマを扱っているものだから当然ながら終始心苦しく重たい感じが流れている。
最後の、主人公のやるせなさが迫る感じは、筆者の力量を見た感じがする。(テーマが私個人の事情にヒットしているということだけではなく)物語の展開方法、最後に極地に至るまでの場面の運び方が巧みだなと思った。
読んでいてとにかく苦しかった。辛かった。こういう現実があることを認めたくなかった(これは小説だけど実際にテレビでこういう事件はよく見聞きする)。とにかく子供は、子供第一優先で考えられる夫婦だけが持つべきだなと思った。と、平日の家事育児を共働きの妻にほとんど押し付けている自分が偉そうに述べる資格はないのだけれど。しかしなぁ、仕事がある中、どうしろってんだ。個人の努力だけでは如何ともし難いよ。